1on1で部下から話すことがないと言われる原因
1on1で部下から話すことがないと言われてしまうのは、いったいなぜなのでしょうか。原因を知ると対処法が見えてくるため、把握しておきましょう。
考えられる原因は、下記の5つです。
・信頼関係を築けていない
・緊張している
・目的を理解していない
・関係性が悪い
・1on1の時間がもったいないと思われている
信頼関係を築けていない
信頼関係を築けていないと、部下から話をしてもらえません。部下から相談されたりプライベートな話をしてもらえたりするのは、信頼関係があってこそです。
例えば、長い付き合いの友人には相談できても、知り合ったばかりの人には相談できない人が多いでしょう。信頼関係がないと、なにを話せばいいか、どう思われるかなど不安で話すことができません。
信頼関係は、長く一緒に働いていれば自然に構築できるものではありません。日々の接し方から意識し、信頼関係を築くようにしましょう。
緊張している
部下が話すことがないというときは、単に緊張している場合もあります。緊張すると、なにを話せば良いか、なにを話そうとしていたのかわからなくなってしまいます。
もともとシャイな方もそうですが、特に新入社員に多いパターンで、「自分のことで上司に迷惑をかけたくない」「自分の悩みはたいしたことがない」と、このように考えてしまいます。
本心を隠されてしまうと、1on1の意味がなくなってしまいます。緊張をほぐすコミュニケーションを心がけましょう。
目的を理解していない
部下が1on1をなぜ行っているのか、その目的を理解していないと、話すことがないと言われてしまいます。話すべきことでも、話さなくていいと考えてしまうのです。
そもそも、1on1は上司と部下がお互いに分かりあい、信頼関係を深めるのが目的です。そのため、どんな些細なことでも話してもらい、部下の考えを理解する必要があります。
目的がわかっていないと「特に話すことはない」、「何かのテーマを考えなければいけない」と思ってしまうので、1on1の目的は、あらかじめ伝えておくようにしましょう。
関係性が悪い
上司と部下の関係性が悪いと、1on1で話したくないと思われてしまいます。特に、上司が苦手、怖いと思われると、1on1で話してくれません。
1on1の際、高圧的に接していると、怖いという印象を持たれやすいので、質問をする必要はありますが、質問攻めにならないように注意しましょう。
高圧的にならないコツは、傾聴を意識することです。1on1はあくまで自分が話す場ではなく、部下の話を聞く場だと心得ておくことが大事です。
1on1の時間がもったいないと思われている
本当に話すことがないわけではなく、1on1の時間がもったいないと感じているため、早めに終わらそうとしているケースがあります。
1on1は業務の手を止めて実施するため、部下も意義を感じたいはずです。話すことが毎回同じだったり、業務に追われていたりすると、1on1の時間がもったいなく感じてしまいます。
1on1を行う際は、部下のスケジュールも気にしてあげましょう。
1on1で部下から話すことがないと言われたときの対応
1on1で部下から話すことがないと言われたとき、実際にはどのような対応をすれば良いのでしょうか。その際の対応は、下記の4つです。
・信頼関係の構築を図る
・「話すことがない」という気持ちに共感を示す
・1on1の目的を伝える
・必要なスキルを身につける
信頼関係の構築を図る
1on1で部下から話すことがないと言われたら、まず信頼関係の構築を図りましょう。部下から信頼を得れば、話してみようかなと思ってもらえます。
信頼関係を築くには、上司自身がまず自分のことを話すのをおすすめします。自分の生い立ちや過去の仕事の失敗談を話すと、親近感を持ってもらいやすいです。
また、普段からコミュニケーションを取っておくと、信頼関係を築きやすいです。雑談や何気ない会話で、普段からコミュニケーションを取っておきましょう。
部下とコミュニケーションを取るコツは、「部下とコミュニケーションをとるための5つのコツ!避けるべき行動とは?」で紹介していますので、参考にしてください。
「話すことがない」という気持ちに共感を示す
話すことがないと言われた場合、無理に聞き出そうとするのではなく、まずは部下の気持ちに共感を示すのもひとつです。
例えば、上司側から「そうですよね。義務的に“さあ話しましょう”と言われても、特に話したいトピックがないということもありますよね」と共感しつつ話します。すると部下側も「ええ、別に問題もないし……」と自然に返答しやすくなるでしょう。こうした流れで、話を続けやすい環境をつくることができます。
1on1の目的を伝える
1on1で部下から話すことがないと言われたとき、その目的をしっかり伝えることも有効な手段のひとつです。
1on1の主な目的はより良い人間関係を構築し、部下の成長やパフォーマンスの向上を図ることです。これができれば、職場の活性化も期待できます。
目的が分かれば、話すべきことが分かり、1on1が有意義な時間になります。1on1の目的をしっかり伝え、上司と部下お互いにとって意味のある時間にしましょう。
必要なスキルを身につける
上司が1on1に必要なコーチングスキルやフィードバックスキルを身につけることも大切です。部下の話に適切な質問を返したり、聞くべきところできちんと傾聴したりと、話を聞き出す側のスキルによって、1on1の成功が左右されます。
管理職向けにコーチングやフィードバックスキルが向上する研修などを実施すると良いでしょう。
効果的な1on1の進め方
効果的に1on1を進めるにはどのようにすれば良いのでしょうか。ここでは、1on1ミーティングの進め方をステップごとに紹介します。
ステップ0|事前準備
1on1ミーティングは、事前準備なしに臨むと雑談で終わったり、具体的なプランにたどり着けなかったりすることがあります。事前準備をしっかり行って、効果的なミーティングにしましょう。
事前準備として、1on1の目的と意義を共通認識として共有しておく必要があります。また、ざっくばらんに雑談をするのではなく、1on1のテーマを決めておくことでスムーズに会話が始められます。そのためには、事前に部下が抱える問題の洗い出しが必須です。
当日のテーマは、部下の意思を尊重しましょう。部下が話したいことや聞きたいことを中心に話を進めるのがおすすめです。具体的なテーマの例は後述します。
ステップ1|アイスブレイクを行う
1on1が始まったら、まずアイスブレイクが必要です。いきなり本題に入ると部下を萎縮させてしまうおそれがあるため、場の空気を温める必要があります。気分や日々の体調、関心があることなど、部下が話しやすい身近なテーマから入りましょう。
ステップ2|部下の話に耳を傾ける
1on1のテーマが決まったら、部下が話しやすいような質問を重ねながら、困っていることがないか聞いてみましょう。部下が話したいことを優先して傾聴するのが基本です。聞きながら口を挟んだり否定したりせず、部下の気持ちに寄り添いながら聞き役に徹しましょう。
時間の都合上、用意したテーマがすべて話せなかったとしても問題ありません。すべて聞き取ろうと部下の話を遮ったり切り上げたりしないように注意しましょう。
ステップ3|上司からフィードバックを伝える
部下が話したいことを話し、自分の考えや思いをまとめることができたら、上司がフィードバックを行います。上司の考えを押し付けたり、部下の考えを頭ごなしに否定したりするのはNGです。
適切な質問を投げかけ、部下が自分で気づきを得るように導くことが大切です。考えながら仮説と検証を繰り返し、最適な答えにたどり着けるまで一緒に考えましょう。部下から答えが出てこないようなら、方針だけヒントを与えてみるのもおすすめです。
ステップ4|今後のアクションプランを考える
部下の状況や課題を把握し、解決の糸口がみつかったら、アクションプランまで一緒に考えます。部下が上司のサポートを必要とするのであれば、どういった部分でサポートが必要なのかを聞き取って対応しましょう。
部下は自身の考えをまとめながら、上司がフィードバックをすることで、より良い解決につながります。アクションプランは大まかなものではなく、なるべく具体的な数値や時期を決めるのがおすすめです。
ステップ5|振り返りを行う
最後は1on1ミーティングの振り返りを行いましょう。決まったアクションプランや上司が行うサポートなどをお互いに共通認識として確認することが大切です。
ミーティングは継続して行うものであるため、次回のミーティングで同じ内容を話すことがないように、記録に残すのも大切です。どちらか一方だけでなく、上司も部下もそれぞれが記録を残しましょう。
毎回記録を残しておけば、考察の過程やアクションプランの変遷なども見えるため、成長を感じることにもつながります。
1on1でしっかり話すためにはトークテーマを考える
1on1を有意義な時間にするには、トークテーマを考えておくと有効です。ピンポイントで話せれば課題解決にもつながるため、トークテーマをあらかじめ考えておきましょう。
1on1で話すトークテーマの例は、下記の3つです。
・業務について
・健康状態について
・プライベートについて
業務について
同じ会社で働いている以上、業務について話すことは重要です。部下の不満や課題を把握できれば、今後より良い職場にするためのヒントが得られるかもしれません。
ただ、上司から不満はないかと聞かれても、部下は答えづらいです。雑談から入るなどして、なるべく話しやすい雰囲気を心がけましょう。
また、小さな課題でも話し合えるのが1on1の良いところです。今どんな業務をしていてどんな部分で困っているのかなど、細かく質問してみてください。
例えば、仕事の進め方や課題など、最近仕事に関して困っていることがないか聞いてみるのもおすすめです。もう少し踏み込んで、現在の会社に対する不満や将来への不安、要望と合わせてキャリアに対する考えなども聞いてみましょう。
興味や関心のある業務から、今後取り組んでみたい仕事の話にも発展できます。また、仕事に対する姿勢をみるためにも、最近の仕事の状況以外にも、成功体験や失敗体験についても聞いてみると良いでしょう。
健康状態について
1on1では、部下の健康状態を把握することも重要です。ここでいう健康状態とは、体だけでなく心の健康状態も含まれます。
一見元気そうでも、実は心身ともに疲れ切っている場合もあります。「睡眠時間は確保できているか」「人間関係で気になることはないか」など、質問してみましょう。
1on1で直接的な課題が出てこなかった場合でも、部下の普段の様子を注意してみるようになり、細かい変化に気づきやすくなります。部下の健康状態は気にしておきましょう。
例えば、体調の変化や業務量の多さ、残業の有無、自宅で仕事をしていないかどうかなども合わせて確認が必要です。業務量や残業が多い場合、体調の悪化に直結するおそれもあるので注意しましょう。
プライベートについて
1on1では、プライベートについて話すことも有効です。プライベートについての話題は、会話のつなぎになったり信頼関係を深めたりする効果があります。
特に、1回目の1on1のときは、仕事の話よりはプライベートな話題のほうが話も弾むかと思います。
例えば、家族のことや休日の過ごし方、趣味や好きな食べ物などのパーソナルな部分から、仕事と関連付けてワークライフバランスについても聞いてみましょう。
また、仕事以外で興味をもっていることや、最近気になっているニュースを聞いても良いかもしれません。共通の話題がみつかると一気に打ち解けることができます。
しかし、信頼関係が構築できていない状態でプライベートな話をすることに、抵抗がある方もいます。部下が嫌がっているようであれば、無理に話す必要はありません。部下の様子を見ながら話すようにしましょう。
まとめ
1on1は部下と上司が信頼関係を築き、部下の成長やパフォーマンスの向上を図る良い機会です。ただ、信頼関係が築けていなかったり、部下が1on1の目的を理解していなかったりすると、1on1で部下から話すことがないと言われてしまいます。
そんなときは、信頼関係の構築を図ったり1on1の目的を伝えたりして対応しましょう。また、業務の進め方や健康状態についてなど、トークテーマを決めておくと話しやすいです。
1on1の進め方でも紹介したように、事前準備は必須です。準備なしにミーティングに入ると、スムーズに進められず、時間の無駄になってしまいます。
1on1をより良いものにするため、上司は考えて実施するようにしましょう。
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