目次
早期離職の現状
早期離職とは、採用した社員が3年以内に退職することを指します。まずは前提知識として、国内の入職者数・離職者数が近年どのように推移しているのかを把握しておきましょう。
令和4年の1年間における入職者数は約780万人、離職者数は約766万人で、入職者が離職者を約14万人上回っています。
就業形態別に見ると、一般労働者の入職者数は約440万人、離職者数は約441万人で、離職者が入職者をわずかに上回りました。一方、パートタイム労働者の入職者数は約340万人、離職者数は約324万人で、入職者が離職者を約16万人上回っています。
出典:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」
新卒採用の早期離職の現状
厚生労働省の調査によると、就職後3年以内の離職率(令和2年3月卒業者)は、新規大学卒就職者が32.3%、新規高卒就職者が37.0%という結果でした。また、事業所の規模が小さくなるほど早期の離職率が高くなっています。
事業所規模別、産業別のデータは下記の通りです。
【事業所規模別の3年以内離職率】
事業所規模 | 大学卒就職者 | 高卒就職者 |
1〜4人 | 54.1% | 60.7% |
5~29人 | 49.6% | 51.3% |
30~99人 | 40.6% | 43.6% |
100~499人 | 32.9% | 36.7% |
500~999人 | 30.7% | 31.8% |
1,000人〜 | 26.1% | 26.6% |
【産業別の3年以内離職率】
産業 | 大学卒就職者 | 高卒就職者 |
宿泊業、飲食サービス業 | 51.4% | 62.6% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 48.0% | 57.0% |
教育、学習支援業 | 46.0% | 48.1% |
医療、福祉 | 38.8% | 46.4% |
小売業 | 38.5% | 48.3% |
3年以内離職率トップの宿泊業,飲食サービス業では、高卒・大学卒の両方で、実に5割以上の入職者が3年以内に離職しています。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」
早期離職の主な原因
早期離職の原因は多岐にわたり、個別の対策が必要です。ここでは主な原因をみていきましょう。
賃金や給与への不満
多くの社員が早期離職する理由のひとつに、賃金や給与への不満があります。特に年功序列や終身雇用が前提の企業では、「年齢が低い=給与が低い」という仕組みに納得できなかったり、自分の給与が不当に低いのではと感じたりしてしまいがちです。また、スキルに見合った報酬が得られないことに対する不満も早期離職の原因となります。
業務内容への不満
入社前の期待と実際の業務内容とのギャップも、早期離職の大きな要因です。採用過程での情報不足や誤解により、社員が自分の仕事に満足できないことがあります。これを防ぐためには、採用時に正確な業務内容を伝えることが重要です。
将来性への不安
企業の将来性に対する不安も、早期離職の原因です。社員が自分のキャリアパスが見えない、または企業の将来性に疑問を抱くと、離職を考えるようになります。この問題を解決するためには、社員に対して明確なキャリアパスを示し、企業のビジョンを共有することが必要です。
人間関係やカルチャーへの不満
職場の人間関係や企業カルチャーへの不満も、早期離職の原因となります。先輩や同僚との関係がうまくいかない、セクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントが存在する場合、社員は早期に退職を決断することがあります。企業は健全な職場環境を維持し、ハラスメント防止の取り組みを強化することが重要です。
労働環境への不満
労働環境も早期離職の一因です。長時間労働や休日出勤が常態化している企業では、社員の負担が大きくなり、離職率が高まります。残業時間や休日出勤を減らし、ワークライフバランスを実現することが求められます。
離職率が高くなる原因については、下記の記事も参考にしてください。
早期離職が企業に及ぼす影響
早期離職者が増えると、企業にはさまざまな悪影響が及びます。特に人事担当者にとっては、離職者を減らすための対策が急務となります。下記では、早期離職が企業に与える具体的な影響について詳しくみていきましょう。
採用・育成コストの増大
企業が新たな人材を獲得するには、求人広告費を中心とした採用コストや、選考プロセスに関わる従業員の給与など、一定のコストを投じなければなりません。早期離職が発生すれば、これらのコストが無駄になるだけでなく、新たな人材を獲得・育成する必要があることから、さらにコストが増大してしまいます。早期離職が頻発し、これらのコストが企業の財政を圧迫することで、他の重要な投資機会を失ってしまうおそれもあるのです。
社員のモチベーション低下
離職者が担当していた業務の引き継ぎなどで、既存社員の業務負担が増えると、職場の雰囲気が悪化します。特に優秀な人材が早期離職すると、リーダー候補が育たず、企業の将来的な安定性が損なわれるでしょう。さらに、離職者が出るたびにチームの士気が下がり、生産性が低下するリスクも高まります。
企業のイメージダウン
「離職者が多い=働きにくい会社」という印象を社内外に与えてしまうのも、早期離職による悪影響のひとつです。昨今は、SNSや口コミサイトなどで、企業の評判の良し悪しを簡単に知ることができます。そのため、早期離職が多い企業はネガティブなイメージが広まりやすく、結果として優秀な人材が応募を避けるようになるでしょう。このような悪循環が企業の成長を阻害する要因となります。
【フェーズ別】早期離職を防止するための具体的な対策例
早期離職を防止するためには、採用のミスマッチを減らし、入社後のフォロー体制を整えることが重要です。ここでは、早期離職を減らすためにできる具体的な対策をフェーズごとに紹介します。
フェーズ1|採用段階
採用段階でのミスマッチを少なくするためには、下記のような対策が有効です。
・リファレンスチェック:候補者の過去の職務経験や人間関係を確認し、企業の文化や業務内容に合った人材を選ぶことができます。
・構造化面接:すべての候補者に対して同じ質問を行うことで、評価の一貫性を保ち、公平な採用を実現します。
・インターンシップ:候補者に実際の業務を経験してもらうことで、企業との適合性を確認できます。
フェーズ2|採用後から定着まで
採用後から定着までの期間は、丁寧なケアを行うことが重要です。オンボーディングプロセスを整え、新入社員がスムーズに業務に適応できるようサポートしましょう。具体的には、入社初日から研修プログラムを実施したり、メンターを配置したりなどの施策が効果的です。
フェーズ3|定着後から戦力化まで
社員が企業に定着した後も継続的なケアが欠かせません。例えば、1on1ミーティングを定期的に行い、社員の悩みや意見を直接聞くことで、個々のニーズに応じたサポートが可能になります。
フェーズ4|戦力化以降
社員が戦力となって活躍し始めた後も、エンゲージメントやモチベーションを向上させる仕組みが必要です。適切な人事評価制度を設計した上で、社員の貢献度を正当に評価し、報酬や昇進に反映させます。また、社員が自己成長を実感できるような目標設定や、定期的な満足度調査の実施も欠かせません。
まとめ
早期離職は企業に深刻な影響を及ぼし、採用コストの増大や社員のモチベーション低下、企業イメージの悪化を招きます。企業は若手従業員のフォロー体制を整え、職場環境を改善することで、離職率の低下を目指しましょう。
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