効果的な部下の褒め方とは?褒める必要性やNGな褒め方も解説

パワーハラスメント問題への意識が高まるなか、多くの管理職が部下との適切な接し方に悩んでいるのではないでしょうか。現代のビジネス環境では、マネジメントスタイルが「叱る」から「褒める」へと変化しています。適切に褒めることは、部下の積極性と自主性を引き出し、良好な社内関係の構築に貢献し、さらには離職率の低下にも効果的です。 今回は、部下の成長を促進する効果的な褒め方と、逆効果となる避けるべき褒め方について、実践的なアドバイスを紹介します。


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部下を褒める必要性

褒めることは部下の成長と職場環境の向上につながります。ここでは、褒めることで生じるポジティブ要素をみていきましょう。

部下の積極性・自主性を引き出すため

褒められることで部下の自己肯定感が高まり、仕事に対してより前向きな姿勢を持つようになります。

褒めることは、増やしてほしい行動を強化する上で効果的な手段です。部下が良い行動をした際に褒めることで、その行動が繰り返されやすくなります。これは、心理学で「正の強化」と呼ばれるメカニズムによるものです。

また、自分の長所に目を向けられるようになると仕事が楽しくなり、「もっと上達したい」という向上心が生まれます。自分の強みを認識することで、それをさらに伸ばす意欲が高まります。

社内で良好な人間関係を築くため

適切に褒めることにより、部下が心を開きやすくなります。上司との間に良好なコミュニケーションが生まれ、信頼関係が築かれていくのです。

褒められることで得られる喜びや安心感には、職場の雰囲気を明るくする効果があります。また、心理学では「好意の返報性」と呼ばれる現象があり、褒められた人は褒めた人に好意を返しやすくなります。

こうした相互作用が続くことで、職場の人間関係が良くなり、協力しやすい環境が生まれるでしょう。

離職率を低下させるため

適切に褒められることで部下のモチベーションは向上し、職場で働き続けたいという意欲が高まります。十分な評価が得られる環境では、従業員の満足度が上がり、結果として離職率の低下につながるでしょう。

特に優秀な人材は自分の能力や成果が適切に評価されることを重視する傾向があります。褒める文化が根付いた職場では、そうした優秀な社員の定着率が向上し、組織の競争力強化にもつながるのです。

褒めることは、部下の成長を促し、良好な人間関係を築き、優秀な人材の定着にも役立ちます。適切な褒め方を実践することで、部下だけでなく、組織全体の発展に貢献できるでしょう。

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部下の成長につながる効果的な褒め方

マネジメント業務において、部下の育成は最も重要な役割のひとつです。特に現代はパワハラ問題などへの配慮から、適切な指導方法を模索している管理職も多いでしょう。

「褒めて育てる」というアプローチは効果的ですが、ただ漠然と褒めるだけでは十分な効果が得られません。ここでは、部下の成長を最大限に促す効果的な褒め方を紹介します。

また、部下の適切な叱り方については、こちらの記事をご覧ください。
部下の叱り方のコツとは?信頼関係を築きながら成長を促す方法を紹介

効果的な褒め方1|その場ですぐに褒める

部下の良い行動や成果を見つけたら、できるだけその場ですぐに褒めることが大切です。タイミングが遅れると、どの行動への評価なのかが曖昧になり、効果が半減してしまいます。

例えば、会議での的確な発言や、顧客対応での臨機応変な対処など、良い行動を目にしたらその場で「今の発言は良いね」「今の対応は良かったよ」などと伝えましょう。

即時のフィードバックによって、部下は自分のどの行動が評価されたのかを明確に理解し、同様の行動を繰り返す動機付けになります。

効果的な褒め方2|具体的な行動や過程を褒める

「よくやったね」「素晴らしい」といった抽象的な褒め方ではなく、具体的にどの行動や成果が良かったのかを明確に伝えることが大切です。具体的に褒めることで、部下にどのような行動を期待しているかを暗に伝えることができます。

また、結果だけでなく過程を褒めることも重要です。たとえ結果が完璧でなくても、そこに至るまでの努力やアプローチ方法、解決策を見つけるためのプロセスを評価することで、部下のモチベーションを高め、次への挑戦意欲を引き出すことができます。

「この報告書は、データ収集の方法が非常に効率的だった」など、具体的な過程を褒めましょう。

効果的な褒め方3|相手の名前を入れて褒める

褒める際に部下の名前を入れることで、より個人的で心に響く褒め方になります。「〇〇さんのおかげでプロジェクトがスムーズに進みました」など、名前を入れることで、褒められた側は自分自身が認められていると実感しやすくなるでしょう。

このような褒め方は、チーム内でのその人の貢献を明確にし、自己価値観を高める効果があります。特に複数の部下がいる環境では、名前を出して褒めることで、その人の存在価値を組織内で可視化できるのです。

効果的な褒め方4|失敗したときも褒める

失敗は成長のための貴重な機会です。部下が失敗したときこそ、その中に褒めるべき点を見つけて評価することが、真のマネージャーの力量です。たとえ結果が思わしくなくても、挑戦する姿勢やリスクを取った勇気、問題解決への取り組み方など、褒めるポイントは必ずあります。

失敗時に褒めることで、部下は「自分のすべてが否定されているわけではない」と感じ、前向きに次の挑戦へ進むことができます。上司の役割は、失敗によるマイナスの状態から、少なくともプラスマイナスゼロ、できればプラスの状態まで持っていくことです。

「今回は結果として失敗したけれど、〇〇という点は非常に良かった」と具体的に褒めることで、部下の自信回復と成長を促すことができます。

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【NG】逆効果になりやすい部下の褒め方

部下を育成する上で「褒める」ことの重要性は広く認識されていますが、単に褒めれば良いというわけではありません。褒め方を間違えると、モチベーションの低下や信頼関係の損失など、逆効果を招くおそれがあります。

マネージャーとして避けるべき褒め方を理解し、効果的なコミュニケーションを心がけましょう。

NGな褒め方1|嘘やお世辞で褒める

形式的な褒め言葉やお世辞は避けるべきです。人は表情や声のトーンから本音を察し、心のこもっていない褒め言葉はすぐに見抜かれてしまいます。

嘘の褒め言葉は信頼関係を損ない、「本当の評価はどうなのか」と部下を不安にさせる要因になります。心からの言葉でなければ、無理に褒めないほうが良いこともあるでしょう。

部下をおだてるのではなく、誠実な評価を伝えることが大切です。

NGな褒め方2|褒めるポイントを間違える

部下のポジションやスキルに合わない褒め方は逆効果です。例えば、ベテラン社員に「基本的な業務ができて偉い」と伝えるのは失礼にあたります。誰にでもできることを過度に褒めると、「自分の能力を低く見られている」と感じさせてしまいます。

また、容姿や年齢など、本人の努力や実績とは無関係な要素を褒めても成長にはつながりません。褒める際は、努力や行動、成果に焦点を当てることを意識しましょう。

NGな褒め方3|過度なインセンティブを提示する

「今月の売上トップには、○○万円の褒美を出そう!」など、突発的で一貫性のない報酬は、逆効果になります。インセンティブを提示すること自体が悪いわけではありませんが、基準の明確さや、公平性が大切です。

褒め言葉自体が価値を持つよう、日頃から適切な承認文化を育み、インセンティブに頼りすぎない環境を整えるようにしましょう。

NGな褒め方4|他者と比較する

「Aさんよりもずっと頑張っている」など、他者を引き合いに出す褒め言葉は避けるべきです。こうした比較は、チーム内の不和を招き、協力的な職場環境を損ないます。

また、褒められた側も同僚が貶められていると素直に喜べません。比較が必要な場合は、「3か月前と比べて〇〇の点が向上している」といったように、個人の成長に焦点を当てましょう。

NGな褒め方5|褒めるだけで終わる

褒め言葉だけで終わらせず、具体的なフィードバックを加えることが重要です。「素晴らしい」だけでなく、その理由や次のステップも伝えましょう。

特に、成長段階にある部下には、客観的な数字を用いたフィードバックが効果的です。例えば、「前回より30%早く処理できましたね。次は〇〇を意識すると、さらに良くなるでしょう」といったように、褒め言葉と建設的な提案を組み合わせることで、継続的な成長を促せます。

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まとめ

部下を適切に褒めることは、職場環境の改善に不可欠です。自己肯定感を高め、積極性を引き出し、離職率の低下にもつながります。

効果的な褒め方としては、(1)その場で褒める、(2)具体的な行動を指摘する、(3)名前を入れる、(4)失敗の中にも良い点を見つけることが重要です。

一方、嘘やお世辞、他者との比較は逆効果となります。部下の小さな成長を見逃さず、具体的に褒めることを実践しましょう。

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