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人間力とは?必要な要素3つ
内閣府が2003年に公表した「人間力戦略研究会報告書」によると、人間力とは「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義付けられています。
また、人間力の定義は3つの要素によって構成されています。ひとつずつ見ていきましょう。
出典:「人間力戦略研究会報告書」(内閣府)
1.知的能力
知的能力の要素とは、学問や学びを活用する力であり、以下の4つの項目に分かれています。
・学校教育により習得できる「基礎学力」
・仕事で成果や結果を出すために必要な「専門的な知識、ノウハウ」
・情報収集や複眼的、論理的な分析を行い、的確に表現する「論理的思考力」
・柔軟な発想から新たな価値や行動を生み出す「創造力」
2.対人関係力
対人関係力の要素とは、人との関わりにおいて社会に貢献しようとする力を表し、以下の5つに分かれます。
・異なる文化、世代、立場の人たちとともに理解し合う「コミュニケーションスキル」
・メンバーの役割を明確にし、チームを目標達成に導く「リーダーシップ」
・社会の利益となるよう積極的に行動できる「公共心」
・自主的かつ自立的に規律ある行動ができる「規範意識」
・他者を尊重し切磋琢磨しながら互いを高め合う「相互啓発力」
3.自己制御力
自己制御力の要素とは、知的能力や対人関係力を高めるために必要な能力であり、自分を律する力を表します。自己制御力は以下の3つの項目に分かれています。
・学習、就業、社会参加、目標に対する「意欲」
・信念をもって粘り強く取り組む「忍耐力」
・自分らしい生き方や成功を追求する「自己受容、自己実現力」
リーダーに求められる人間力8つ
基本的な能力でありながら、人間としての魅力を高めるために欠かせない人間力ですが、具体的にリーダーに求められる人間力とはどのようなものなのでしょうか。
ほんの数年間の間に、私達の生活は大きく変化しています。
それに伴い、リーダーに求められる人間力も、大きく変わってきています。
想定外のことに対応できるかどうかという柔軟性。
ほんの数年前までは、毎日会社に勤務することが当たり前であり、多くの場合、オフィスの中で、いかにマネジメントするかという考えでした。
しかし、現在は在宅勤務が一般化され、更にはワーケ―ションといったように、時にはレジャーを楽しみながら、仕事をするといったスタイルさえ出てきています。
そうなると自然に各自、作業する時間が異なってくることになり、勤務時間という概念も大きく変化してきます。
部署の上司が帰るまでは、部下が先に帰りにくいなどという状況は、過去の事になっていくのです。
課でリモート会議を開いたら、部下は、南国からTシャツ姿で爽やかな風に吹かれながら参加などということも、当然あり得るのです。
そのような状況の中で、チームをまとめ、ミッションを遂行していくために、これからのリーダーに必要な人間力とはどのようなものでしょう。
ここではリーダーに欠かせない人間力を8つに分けて見ていきます。
クリエイティブ力
以前は、リーダーたるものある程度の知識が必要とされていました。知識とは何でしょう?学習された記憶のことです。しかし、スマートフォン一つあれば、大抵のことは調べることが出来ます。必要なのは、知識ではなく、その知識をいかに生かせるかというクリエイティブな能力です。
環境が大きく変化している現在、従来通りのやり方は通用しません。
業務管理能力
リーダーになると、実務だけではなく業務管理を任されるようになります。
業務管理能力におけるリーダーの人間力には、目標達成のために人一倍努力する姿勢を見せ、チーム全員を感化させる力が欠かせません。
また、リーダーはさまざまな進捗状況を確認しながらスケジュールを管理し、定められた期日は確実に守らなければならないため、部下に適切な仕事を振り分け、チーム内の作業効率を高めることが必要になります。
そのためには一人ひとりの能力や個性を把握して、状況に合わせた業務依頼を行うことが必要です。「どのように伝えればやる気になってくれるのか?」「どうしたら他人事ではなく、自分事として捉えてもらえるのか?」など、常に部下の立場を考えながら働きかけましょう。
さらに、円滑に情報を共有するためには、メンバーとの良好な関係性も求められます。相談しやすい雰囲気づくりはもとより、相談されても決して口外しない分別をもつことが大切です。
判断力・決断力
さまざまな場面ごとに、リーダーは判断や決断を繰り返しながら物事を進めていかなければなりません。
普段は協調性や思いやりといった柔らかい雰囲気を漂わせながら、いざというときには迷わずに自信をもって決断できるリーダーは、周りに流されない芯の強さをもっているといえます。
また、人間力の高いリーダーであれば、目指す方向や理想をもって行動します。自分の強い意志で判断、行動し、ときには部下やチーム全体のためを思い、あえて苦言を呈する強さも重要な能力のひとつといえるでしょう。
また、リーダーには関わる人すべてを巻き込むリーダーシップを発揮しながら、チーム全体を牽引する力も求められます。
頼りになるリーダー像を示すことができると、部下たちからも信頼され安心感を与えることができます。
結果として全体の士気が高まり生産性の向上にもつながるでしょう。
柔軟な対応力
先ほどの判断や決断を行う際にも重要となるのが、臨機応変で柔軟な考え方です。ただし、柔軟性とは、自分の意見を曲げるということではなく、何事にも自分の意見をもちながら、間違っていればその考えをすぐに改めることのできる素直さを意味します。
あるいは、人材育成を考えるのであれば、相手の意見や価値観を否定したり、拒絶したりといったことは一切行わず、メンバーに任せて自らが考えて動くよう仕向けることも、リーダーに求められる柔軟性です。
また、多くの部下と仕事を進める上では、不確実なことや変化の多い状況にも遭遇するでしょう。
そのようなときこそ、固定概念にとらわれずに対応できる力が重要になります。
自力で考えて突破する力も必要ですが、部下の意見を積極的に取り入れる包容力をもち合わせることができれば、チームとして問題解決に当たることも可能です。
意見を聞いてもらえる部下としては、自主性が芽生えるきっかけにもなるため、寛容に話を受け入れてくれるリーダーは積極性の高いチームを作りやすいといえます。
自律性
同じオフィスの中で、励まし合いながら作り上げていったチームビルディングの手法も、これからは通用しなくなっていきます。
部下それぞれの個性を把握し、その仕事のスタイルも理解したうえで、チームとしてのミッションを成し遂げていく力が必要になってきます。
同じ空間にいれば、何となく分かりあえることも、離れている環境では伝わらないこともあります。
リーダーは、部下が、いまどんな問題を抱えているのか、どういった状況にあるのかなどを把握する必要があります。それと同時に、自分のマネジメントは、自分だけで行っていかなくてはなりません。
さりげなく部下がねぎらってくれるなどということは、これからは少なくなっていくのです。
その際、自律性ということが必要になってきます。
自律性とは、自分自身の責任の下、思考や感情をコントロールする力です。
自律性を持つことで、自ら選択し、選択したことに責任を持つことが出来ます。
孤独感がともなく態度にも見えますが、自律性を身に着けることで、自分をしっかりとマネジメントし、充実感や達成感などを味わえるよう、メンタルを整えることができます。
コミュニケーション力
リーダーは人を動かして仕事を進めていくため、部下一人ひとりとの良好な関係を築くためにもコミュニケーション能力は欠かせません。
怒りやイライラといったネガティブな感情を態度や表情に出さない忍耐力を備え、どんな人に対しても丁寧な言葉遣いで接し、相手を尊重しながら理解し合おうとする人間力の長けたリーダーであれば、部下も一緒にいてきっと心地良さを感じることでしょう。
また、意思疎通や的確な指示力も大切ですが、コミュニケーションとしては相手の話を聞く傾聴のスキルも重要になります。
質問や相談をもちかけた相手に対して、話を途中で遮るような対応をしては、円滑なコミュニケーションができているとはいえないでしょう。タイミングが悪ければ事情を説明して、後からきちんと聞く時間を設けるなど、関心を示す姿勢が大事になります。
さらに、チーム内だけではなく各部署との連携を図ることもリーダーの大切な役割です。
ときには社外とやり取りすることもあるでしょう。さまざまな状況下で、高いコミュニケーション力を発揮してこそリーダーは務まるのです。
部下の育成力
部下のモチベーションと力を伸ばす能力は、各個人やチームを成長させるために必要なスキルです。
コミュニケーションを取りながら気持ちや意思を把握し、個人やチームでの最適な目標を設定し、士気を高めます。
ただし、そのためには部下のことを自分がどれだけ理解しているのかを把握する必要があります。たとえば、経験が少なく自信のない部下に対し、「あなたはやる気がないよね」と指摘してしまうのは、的外れな指導だといわざるを得ません。
部下を育成するためには「経験、能力、やる気」の3つをしっかり押さえたうえで、正しい解決を図る必要があります。
経験が足りていない部下がいるとすれば、まずは経験を積ませるようにし、ある分野の能力が欠けている部下に対しては、その能力を伸ばすような研修に参加させるといった方が、より効果的に部下を育成できるでしょう。
広い視野で考える力
いち早くチームの課題を見つけ、問題解決の糸口を掴むためには、常に部下や上司、顧客など相手の立場になって考える必要があります。
さまざまな見方ができると、相手に寄り添うこともでき、トラブルを未然に防ぐこともできるでしょう。
とはいえ、相手の立場になって考えることは意外と難しいものです。広い視野や自由な視座を身に付ける、あるいは鍛える方法として、以下のように普段から自分と向き合うことが大切です。
・そもそもなぜこれをやるのか?
・もっと良いやり方はないのか?
・本来どうあるべきなのか?
このようなゴールに対するアプローチを自分自身に絶えず問い続けることにより、視座や視点の切り替えが可能になります。
リスクマネジメントという観点でも、視野を広く保ちながら適切な答えを導き出す能力はリーダーにとって重要といえます。
リーダーの人間力を磨き育成を成功させるポイント
はじめからリーダーに必要とされる人間力をもっている人はいません。
十分な能力を身に付けるためには成長していくことが重要ですので、社内でリーダーを育成するためのポイントについて解説します。
中長期的に育成をする
個人差はあるものの、ごく短期間の育成でリーダーに必要な力を身に付けるのは、不可能といっても過言ではありません。
リーダーになるというタイミングで育成を開始するのは遅い可能性があります。
次期リーダーということを見据えて、中長期的な視野をもつことが大切で、3年後に指揮を任せられるように育成を行うといった計画性が必要になるでしょう。
そして社内全体で育成に取り組めるよう、サポート体制の構築が重要です。
そのためには、組織内の意識や目標を確認して、現実的で具体的なゴール設定を行うと良いでしょう。
育成する目的を明確化させる
人材を育成するための絶対的なゴールは存在しません。しかし、リーダーを計画的に育成していくためには何らかの目的を明確化させることが必要です。
企業がリーダーに求める人物像や、どのように活躍してもらいたいのか、具体的な基準や条件を洗い出していき、育成目的とゴールを明確化します。
目的とゴールを明確化することで、社員は自分が目指すべき働き方を考える機会となり、企業にとっても必要とするリーダー像を共有することが可能です。
自発的に動ける環境を整備する
リーダーが人間性を発揮できるようになると、組織の生産性向上に大きな影響を与えるようになります。逆に部下を活かすことができずに、自ら仕事を抱え込んでしまっては組織を効果的に運営することもできません。
自発的に行動し、価値観の異なるメンバーを取りまとめるためには、情報収集やスキルアップしやすい環境を整えていく必要があります。
たとえば、社内SNSやチャットツールを用いて、リーダーといった特定のポジションの人しか知らない情報をチーム全員と共有することにより、チーム内で成果を出そうという意識を作り出すことができます。
何でも「自分でやる」という発想を取り除き、積極的にツールを活用して組織の活性化を図っていくと良いでしょう。
さまざまな業務を経験してもらう
リーダーには、部門、部署、プロジェクト規模の大小を問わず、社内の業務フローを把握し、継続的改善を推進する力が求められます。
経営層がリーダーの資質があると認めた社員には、リーダーに起用する以前より、経験値を増やす取り組みをしましょう。たとえば、経理、人事、企画、営業といった幅広い業務を経験させたり、自身の判断で案件が進められるような裁量権を与えたりするなどです。
研修・OJTの実施
育成を行うためには、学ぶ機会を確保することが必要になります。
リーダーに必要な能力を鍛えるためには、研修や実務を通して体験するOJTが有効です。
研修の中には、社内だけではなく専門会社に外部委託して行う方法もあるので、会社にとって最適な手段を選ぶと良いでしょう。
いきなり難易度の高い内容からはじめても吸収しにくいため、段階的にステップアップしていくような計画を立てる必要があります。
リーダー研修後のフォロー
知識を得ることができても、実際に活かせていなければ意味がありません。
研修をただのイベントとして終わらせないためにも、知識を現場で実践できているかを評価し、振り返りを行う必要があります。
問題点や不十分な箇所があれば改善につなげ、PDCAサイクルを回すように働きかけていきましょう。
また、リーダー研修を受けている人材のモチベーションを維持させることも重要なので、上司や経営者から期待されていることが伝わるような工夫も大切です。
伸び悩むリーダー候補に向けた人間力を磨くプラスのアプローチ
同じように研修に参加していても、人それぞれ成長には差が生まれます。
リーダー候補の社員の中には「能力があるのに伸び悩んでいる人」などが現れることもあるでしょう。
社内としても「どうすれば良いか分からない」と頭を抱えることもあるのではないでしょうか。
原因のひとつとしては、候補者の中にあるネガティブな思い込みが、成長を妨げている可能性があります。
これだけ努力していても、自分は成長できないんじゃないか、リーダーとしてやっていけないんじゃないかという思考があると、どうしても向上することができません。
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人間力が向上し、本来の力を発揮できるようになるでしょう。
また、リーダーシップがとれない、管理職としてうまく働けていない既存社員にも対応可能です。
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まとめ
リーダーに求められる人間力は、チームや個人を管理する力やコミュニケーションスキル、さらには判断力や柔軟性など、高度な能力が必要とされます。
そのため、候補生の育成には時間がかかり、ときには伸び悩むこともあるでしょう。
社内教育だけでは限界を感じる場合には、状況に応じて外部の専門家に委託する必要があるかもしれません。