心理学はコミュニケーション能力をアップさせ人間関係を豊かにする
まずは、ご自身の経歴やお持ちの資格について教えてください。
専修大学法学部を卒業後、住宅メーカーや不動産会社で営業事務の仕事をしていましたが、心理学に興味を持つようになり、仕事をしながら心理カウンセリングの学校に通い始めました。約20年前から心理カウンセラーとして働き出し、2007年の東京・ビジネス・ラボラトリー設立とほぼ同時期から、企業内カウンセリングや研修事業に従事しています。資格は「全国心理業連合会認定プロフェッショナル心理カウンセラー上級資格」「米国ハワイ州NPC法人ホームメンタルカウンセラー協会認定心理カウンセラープロ資格」「米国認定NLPマスタートレーナー資格」「(米)国際コーチ協会認定マインドフルネスコーチ」を取得しています。
心理学に興味を持ったきっかけを詳しく聞かせてください。
心理学に興味を持ったのは、私自身の体調不良がきっかけです。学生時代は健康優良児で、体調が悪いからと急に飲み会を欠席する友達のことを、「本当に体調不良?」と疑っていたほどでした。それが、社会人になって3年目に入った頃、胃痛に悩まされるようになり、食欲が落ちて自分の身体が思うようにならなくなりました。病院に行っても風邪や胃が少し荒れていると言われるだけで、なかなか治りません。これは大病ではないかと随分悩んだ末、はっきりとした原因が見つからず、「ストレスですね」と言われることが多かったので、メンタルが原因かもしれないと思うようになりました。私は学生時代、男女平等が当たり前だと教育を受けた世代でした。ところが社会に出てみたら、全然平等ではない現実がたくさんあり、そのギャップの中で、自分がどのように振る舞えば正しいのかがわからず、それがきっかけとなって体調に現れたのだと思います。このようなときこそ「カウンセリング」が良いのではないかと探しましたが、当時は受けられるところが見つけられませんでした。そのことから「日本にはまだカウンセラーっていないんだ」と思ったことがきっかけで、自分が学んでみよう、と思ったのです。
心理学を学ぶことで、どのような変化がありましたか?
心理状態がコミュニケーション能力と深く結びつくことを理解しました。私は、自分がコミュニケーション能力に問題があるとは思っていませんでしたが、誰とでも仲良くなれるわけでもありませんでした。すぐに打ち解けられない人や苦手な人もいて、でも、それは誰にでもある当たり前のことだと思っていました。ところが、心理学を学んでいくと、私自身にも多くの問題があることに気づきました。自分では認めたくない自分がたくさんいることに気づいたんです!
自分の中に好きではない部分、認めたくない部分が多いと、人とのコミュニケーションにストレスがかかることが分かりました。そして、人に心から優しくできるようになるには、まず自分を大事にできないと難しいということも分かったのです。心理学を学んだことで、自分の心を豊かにすることが、人間関係も豊かにし、人生を充実させることにつながることを実感しました。この体験から、ぜひこのことを社会に伝えていきたいと考えるようになりました。
心理学の理論を活用して、企業の課題を解決
貴社の企業サポートの特徴を教えてください。
弊社のプログラムは、心理学の理論や療法を実践的に活用し、社内でのコミュニケーションを円滑にすることで、さまざまな課題を解決に導くことを目的としています。多種多様な心理の理論や療法を、企業様の状態に合わせて具体的に使いやすい形にして紹介します。具体的な事例に落としてお伝えすることで、企業様にはただ知識を得るということではなく、実際に活かしていただけているところが弊社の大きな特徴です。課題に直面したとき、心の状態がどのようになっているのか、それによってどんなことが起こるのかという仕組みを理解できるので、表面的ではなく心の深いところから変化することができます。一般社員向けには、心が楽になる具体的な方法や、実際の場面に合わせた使用例を提供し、経営層の方には、社員に変化を促す方法をお伝えするなど、対象者や目的に合わせてカスタマイズし、常にブラッシュアップしている点も特徴です。
オファーがあってから企業サポートを実施されるまでの流れを教えてください。
まずは企業様にヒアリングを行い、ご要望や目的、ご予算、業種、規模、従業員の方の世代などを把握した上で、最適なプランをご提案します。顧問契約のような形で定期的に従業員の方のカウンセリングを行い、スポットで研修を組み合わせることもありますし、研修プログラムだけを1回〜数回にわたってご提案することもあります。ご担当者様に研修のデモンストレーションを受けていただいたり、研修後に質問をメールで受け付けてお答えしたりするサービスも行っています。
どのような企業が多く利用されているのでしょうか?
近年、ストレスチェック制度の導入が義務化されたことで、社員のメンタルヘルスケアについて課題を抱えている企業様からオファーをいただくことが増えています。ストレスチェックの結果を受けて、従業員のカウンセリングをしてほしいというご依頼だけでなく、社内環境をどのように整えていけば良いのかというご相談や、最適な研修プログラムを提案してほしいというご要望もあります。また、社員の離職率を下げたいと悩む企業様からのご相談も多いです。
業界でいえば、私が担当している企業様はIT関連や製造業が多い傾向があります。こういった業界では、黙々と作業をする業務が多いため、内向性の強い人が集まりがちです。しかし、社会人である限り、自分だけのペースで作業を進めるわけにはいかず、自分の心との折り合いをつけるのが難しくなります。昼夜逆転して作業をすることもあるなど、過重労働によるストレスもかかりやすいため、メンタルヘルスケアが求められることが多いのだと思います。また、医療機関や介護関係の企業様や介護に携わっていらっしゃる方からのご要望もあります。
1回だけでも社内コミュニケーションに変化が生まれ、離職率の低下に貢献
研修を行うにあたって意識されていることはありますか?
私たちは心理学を専門にしていますが、参加してくださる方々は、心理学に詳しくない方もいらっしゃいます。そのため、なるべくわかりやすくイメージしやすい形でお伝えするように心がけています。心理学では、自分の感情や状態は、自分自身でつくりだしていると考えます。ところがイライラすることが多い人は、「周りの人や環境が自分をイライラさせている」と捉えてしまっていることが多いのです。そのような心の仕組みが理解できると、自分の感情をご自分で変えていけるようになりますので、社内のコミュニケーションが変化していきます。
また、自分が良かれと思って相手に言ったことが、相手は自分を馬鹿にしているというメッセージとして受け取られてしまうこともあります。そのような場合は、相手のタイプを知れば、正しいメッセージの伝え方がわかり、コミュニケーションレベルを向上させることができます。
心理カウンセリングは、心の弱い人が受けるものと思われがちですが、実際は、コミュニケーションを円滑にするための道具なのです。研修後は、参加者の皆様が社内で共通の「コミュニケーションのプラットホーム」を持ち、普段の仕事や生活で学びが実践できるように意識して取り組んでいます。
実際にサポートを受けた企業に変化はありますか。
当社のサポートを受けていただくことで、「そういうことだったのか」という気づきや新しい見解が生まれ、1回目から変化を感じられる企業様が多いです。実際、体調不良を起こしたり、お休みしたりする人が減ったというお声や、離職率が下ったというご報告をたくさんいただきます。例えば、パワハラをしているつもりはないのに、なぜか自分が頑張るほど、部下が辞めてしまうことに悩む上司のようなケースはよく見られます。詳しくお聞きすると、その上司の方の伝え方が、部下の方に対して、「私は君を信頼していません」と解釈される言い方になっているということが原因だったりするのです。このようなコミュニケーションの問題は、ご自身の生育歴も含めて身につけていたパターンなので、そこから見直していくことで、状況が改善されたという例があります。
特にどんな方に企業サポートをおすすめしたいですか。
当社の企業サポートは、どのような方にもおすすめできますが、特に、部下とのコミュニケーションに悩んでいるリーダーや経営層の方々におすすめしたいです。社内コミュニケーションの改善は、部下の方だけが改善を試みても、上司の方に変化がなければ難しい場合もあります。リーダーや経営層の方々が、心理学のノウハウを学び、社内コミュニケーションに導入していただくことで、会社全体の底上げに貢献できると思います。
まとめ
東京・ビジネス・ラボラトリーの設立当初から、多数の企業でメンタルサポートを行ってきた武田亜季さん。今後は、今最も力を入れている「セブンス・トランスフォーメーション」というプログラムを日本に広めていきたいと考えているそうです。「セブンス・トランスフォーメーション」とは、代表の朝妻さんが長年の実績と最新の心理学を導入して開発した全7回の研修プログラムで、ダイナミックに自分を内側から書き換えることができるプログラム。コロナ禍が明けた今こそ積極的に社内コミュニケーションの活性化に取り組んでいきたいと考えている企業様は、サービスを検討してみてはいかがでしょうか。