目次
ラポールの意味
ビジネスシーンでときどき耳にする「ラポール」とは、何を指す言葉なのでしょうか。まずは、ラポールの意味とラポール形成の主な手法を紹介します。
ラポールは信頼関係を表す言葉
ラポールとは心理学の世界でよく使われる、信頼関係を表す言葉です。語源はフランス語で、「橋を架ける」という意味をもちます。
人と人との心の間に橋が架かるように、互いに信頼し合い、心を通わせている状態をイメージすると良いでしょう。
ラポールの手法
ラポール形成の主な手法として、以下のようなものがあります。
・ミラーリング
・マッチング
・ペーシング
・キャリブレーション
・バックトラッキング
どのような手法なのか、それぞれの特徴をみていきましょう。
ミラーリング
ミラーリングとは、同じ方向に頭を傾ける、同じタイミングで飲み物を飲むなど、視覚から得る情報を鏡のように真似する手法です。
同じ動作をすることで、相手が「自分に似ている」「共通点がある」と親近感を覚え、距離が近づきやすくなります。
マッチング
マッチングとは、聴覚から得る情報を相手に合わせる手法です。大きな声の人には大きな声でしゃべる、同じタイミングで息つぎするなど、話すときのトーンや声量、呼吸のタイミングなどを相手とマッチさせます。
会話のテンポや声量が合わない人と話すのは、疲れや不快感を覚えるものです。ラポールを形成するどころか、会話を避けられるようになったり、苦手意識をもたれたりすることもあります。
相手の話し方とマッチさせれば、心地よく過ごせる相手と認識されるため、ラポールが形成されやすくなります。
ペーシング
ペーシングとは、話すときのトーンや声量、スピード、仕草などを相手のペースに合わせる手法です。上記で解説したミラーリングやマッチングを合わせた方法と考えて差し支えありません。
ゆっくりしゃべる人なら自分もゆっくりしゃべる、身振り手振りを交えてしゃべる人なら自分もその仕草を取り入れるなど、相手の言動に合わせていきます。
相手の言動だけでなく、温度感も真似るのがポイントです。明るい話題なら自分も明るい雰囲気を、悲しい話なら自分も悲しい雰囲気を出してみましょう。
こうしてペースを合わせることを意識すると、相手が「波長が合う」「話しやすい」と感じるため、ラポールが形成されやすくなります。
キャリブレーション
キャリブレーションとは、表情・話し方・態度などの非言語情報から、相手の心理状態を予測する手法です。
納得できていないのに、反論すると怒られるかもと思って「わかりました」というなど、人は言葉と気持ちが一致していないことがあります。
こうした言葉の裏の感情を読み取り、本当の気持ちに寄り添ったコミュニケーションを取ることで、「自分のことを理解してくれている」と感じて信頼感がアップします。
バックトラッキング
バックトラッキングとは、相手が「うれしい」といったら「うれしいですね」と返す、いわゆるオウム返しのことです。
自分の発言を繰り返されることで、相手が「きちんと話を聴いてもらえている」と感じるため、ラポールの形成に役立ちます。
バックトラッキングを用いるときに重要なポイントが、相手の発言をそのまま繰り返すことです。「残念です」といわれたのに「悔しいですね」と返すなど、違う言葉に言い換えたり要約したりしてはいけません。
言い換えや要約をすると、相手が否定されたり訂正されたりしたように感じ、ラポールが形成されづらくなります。
ビジネスにおいてラポールが重要視されている理由
最近は、ビジネスの現場でもラポールを耳にする機会が増えています。なぜ心理学で用いられていたラポールが、ビジネスシーンにも取り入れられるようになったのでしょうか。ここでは、ビジネスシーンにおいてラポールが重要視されている理由を解説します。
コミュニケーションを取りやすくなる
上司や同僚、チームのメンバー、取引先の担当者など、ビジネスでは他者とのコミュニケーションが欠かせません。コミュニケーションがうまく取れないと、スムーズに業務が遂行できなくなるでしょう。
ラポールを形成すれば相手との相互理解が深まり、信頼感や安心感を得られるようになるため、コミュニケーションが取りやすくなります。さらに、生産的な会話もしやすくなるので、チームビルディングの強化にもつながります。
話の説得力が増す
人は信頼関係がある人からの話には、しっかりと耳を傾けるものです。「この人がいうなら」と前向きに捉えられやすく、話の説得力も増します。
その結果、提案や助言を聞き入れやすくなるので、部下のマネジメントや顧客との関係作りがスムーズにいくようになるでしょう。
成果を出しやすくなる
ラポールが形成されていると、相手が「この人は話をきちんと聞いてくれる」「間違っても怒られない」と感じ、積極的に発言するようになります。
その結果、社内のコミュニケーションが活性化したり、新たなアイデアが出てきたりなど、生産性や業績アップにもつながるでしょう。
また、ラポールが形成された相手には本音を話しやすくなるため、顧客から今の悩みや課題を聞き出し、ニーズを掴めるようになります。
しっかりニーズを掴めると提案の質が上がるので、成約率アップやリピート率アップなど、成果を出しやすくなるはずです。
ラポールを形成する際のポイント
ラポールの形成はビジネスシーンでも重要なことではありますが、無理に形成しようとすると、かえって相手との関係が悪くなる可能性があります。良好な関係を保ちつつラポールを形成するためのポイントを知っておきましょう。
相手の価値観を理解する
人は自分の考えや価値観に対して理解や共感を示してくれる人に、信頼感を抱くものです。ラポールを形成したいなら、相手の考えや価値観を聴き、共感・理解していることを伝えましょう。
ただし、あまり関わりがない状態で無理に話をさせようとしたり、理解や共感を示したりしても、「馴れ馴れしい」「本当にわかっているのか」と警戒される可能性があります。
相手と会話を重ねて少しずつ話を引き出し、徐々に理解や共感を示していくことが大切です。また、自分と違う考えや価値観であっても、否定しないようにしましょう。
こうして時間をかけることで、相手が「尊重してもらえている」「肯定されている」と感じ、ラポールが形成されていきます。
無理をせずに自然に実行する
ラポール形成のテクニックはいろいろありますが、いずれの方法も意識し過ぎるとわざとらしくなってしまいます。
しつこく相手の真似をしたり、発言を繰り返したりしていれば、ラポールを形成するどころか相手に不快感を抱かせることもあるでしょう。
テクニックを駆使することが目的にならないよう注意し、できる範囲で自然に取り入れるようにすることで、相手に安心感や信頼感を与えられます。
相手を丁寧に観察する
人は言動に心理状態が現れます。ラポールを形成するときには、相手の何気ない動作や表情、声色など言葉以外の部分も丁寧に観察し、情報を集めましょう。
さまざまな情報から相手の心理状態を掴み、気持ちに寄り添った対応を心掛ければ、信頼関係を築きやすくなります。
まとめ
ラポールが形成されると、相手とのコミュニケーションがスムーズにいくようになります。提案や助言も受け入れてもらいやすくなるため、マネジメントや営業の成果が出やすくなるでしょう。
ただし、無理にラポールを形成しようとすると、警戒されたり避けられたりするなど、かえって関係性が悪化するリスクがあります。相手と会話を重ね、時間をかけて信頼関係を築くことが大切です。