中間管理職がストレスを抱える要因と減らすための取組みを紹介

近年はマネジメントの難易度が上がっており、中間管理職の負担は増加傾向です。上司と部下の間に挟まり、責任のある仕事を任されプレッシャーの多い中間管理職世代は、家庭をもち子育て中の人も多く何かとストレスがかかりやすいでしょう。 ここでは、中間管理職にストレスが多い理由とストレスを軽減し、快適に働ける方法をご紹介します。


この記事は約14分で読み終わります。

中間管理職のストレス事情

中間管理職は部下と上司の間に挟まれて、ストレスが溜まりやすいポジションです。コロナ禍になり、さらにマネジメントの難易度が上がっています。

近年はマネジメントの難易度が上がっている

株式会社チームスピリットが行った調査によると、役職者全体では「コロナ禍でマネジメントの難易度が上がったと思う」と「どちらかというとコロナ禍でマネジメントの難易度が上がった」という回答が、合わせて48.0%と半数近くになっています。

また、コロナ禍になってテレワークが増え、オンラインや文章でコミュニケーションを取る機会も増えました。同じ場所で雰囲気を感じられないため、表情や文章の書き方などに神経を使う機会が増え、ストレスが溜まっているようです。

出典:「【プロジェクト型ワーカーに関する実態調査】

大企業の中間管理職の約6割がコロナ禍で「マネジメントの難易度が上がった」と回答

身体的負担・疲労感が増えた役職者は3割以上も」(株式会社チームスピリット)

中間管理職がストレスを抱えてしまう5つの理由

なぜ、中間管理職に就くと仕事にストレスを感じる人が多くなるのか、その理由を4つご紹介します。

1.上司と部下の板挟みになる

中間管理職は、文字通り上司と部下に挟まれて、中間で業務を行わなければなりません。まだまだ業務に対して未熟な部下から不満が出ないよう気を使いながら、上司から言い渡された営業目標や経営目標を達成しなければならないため、常に板挟みの状態であるといえます。

それなりに重たい責任を背負わされる中で、自分の仕事だけに集中せず、部下を育てながら業務を遂行していくことは、大きなストレスになります。人によっては、上司への報告や部下への叱咤がストレスになっている場合もあるでしょう。

上司や部下と性格的に合わない場合でも、自分が上手く立ち回り、業務を遂行しなければならないため、思うように部下が動いてくれずイライラが募るケースもあるようです。

2.上司や部下よりも労働時間が多くなる

中間管理職は、ある程度責任があるポジションであるため、上司から突然仕事を振られることも多いでしょう。自分の業務を抱えながらも、振られた仕事をこなさなくてはならないため、仕事量が増え、結果労働時間も長くなってしまいます。

また、業務に対して未熟な部下の仕事のカバーや、ミスのフォローなども業務の一部としてこなさなければならず、上司や部下よりも長時間労働を強いられるのです。

労働時間が長く残業が続くと、場合によっては家族から不満の声が漏れることもあります。家庭と仕事の両立にも挟まれ、自分でもわからない間に、強いストレスがかかっていることも多いでしょう。

3.部下のミスや人間関係をフォローする必要がある

部下のミスは、基本的に直属の上司である中間管理職が責任を取らなければなりません。まだ、社会人経験が乏しく、業務に慣れていない部下は、場合によってはとんでもないミスをおかすこともあるでしょう。

普段の業務の中で、いくら気を付けていても、ミスは起きてしまいます。次にミスを出さないためにはどうすれば良いかを考え、部下を導くことが必要です。

また、マネジメント業務の一貫で、部下の悩みや相談を受ける機会もあります。自分と年齢が違う若手社員は、考え方が異なる場合も多く、部下の育成が難しいと頭を抱えている中間管理職も多いでしょう。

4.目標やノルマを常に意識しなくてはならない

中間管理職の業務のひとつに、進捗管理があります。業務には、目標やノルマが課せられていることが多いため、部下やチームの能力を考え、達成できるように策を練らなければなりません。

そして、どんなに計画的な策を考えていても、部下が自分の思うように動いてくれるとは限らず、目標やノルマが達成できなかったり、計画通りに進まなかったりすることもあるのです。

このような場合は、自分の思い通りに動かなかった部下のせいではなく、中間管理職の責任になります。

目標数値やノルマ、部下の動きを常に気にかける必要があるため、大きなストレスとなるのです。

5.「働き方改革」の導入で中間管理職にしわ寄せがくる

上司と部下の板挟みになりながら日々のノルマをこなす中間管理職に、さらに追い打ちをかけているのが働き方改革の導入です。働き方改革とは、内閣官房に設置された「働き方改革推進会議」によって示された制度で、長時間労働の見直しや多様な働き方を容認する取り組みです。

働き方改革の導入により、残業時間の制限や有休消化の促進が行われた企業も多いのではないでしょうか。その結果、中間管理職の6割が「業務量が増えた」と感じています。

なかでも、事務作業やマネジメント業務が増えたと感じている中間管理職が多い傾向があります。働き方改革における多様な働き方の実現として、テレワークの導入も急増しました。

「テレワークによって私生活との区別がつかない」「残業できないから家に仕事を持ち帰る」といったケースも多く、マネジメントが多様化していることが中間管理職への負担とつながっているのだと考えられます。

そのほか、Web会議などのIT化が積極的に導入されることで実務の負担は軽減できますが、中間管理職のコンプライアンス強化に関わる負担は大きくなっています。無理な残業や休日出勤が行われないよう業務を調整し、コンプライアンスに違反しないよう配慮が求められているのです。

目次へ

中間管理職のストレスを軽減させる5つの方法

過度のストレスを感じたまま仕事をしていると、うつ病や離職につながるケースもあります。このような事態にならないためにも、ストレスを感じているならすぐに対処しなければなりません。

ここからは、日々ストレスにさらされている、中間管理職のストレスを軽減させる方法を3つご紹介します。

1.環境自体を改善する

まず、全体の仕事量を把握することが大切です。たとえば、業務量的に自分もプレイヤーと加わる必要があるか、あるいは、部下の力量的に自分もプレイヤーに加わる必要があるかなど、現状を把握しましょう。

その中で、少しでも業務効率を上げるシステムが導入できそうなら、検討してみるのがおすすめです。

システムを導入すると費用がかかりますが、ミスの減少につながったり、自分がプレイング業務を行わなくて済むようになったりするため、結果的に企業にとってプラスになるでしょう。

プレイング業務をする時間を減らせば、部下のマネジメントに集中できるので、なにかトラブルが起きたときもすぐに対処できます。

2.仕事の振り分けを適切に行う

仕事を自分ひとりで抱え込むのではなく、部下にもしっかり振り分けるようにしましょう。

ミスを恐れて部下に仕事を振らないでいると、自分の業務量が増えるだけでなく、部下も業務に触れることが少なくなって、いつまで経っても成長しません。

部下を信用して少しずつ仕事を任せていき、部下を成長させながら業務の負担を減らしていきましょう。

適切な量の仕事を任せてもらえた部下なら、やる気や責任力も向上していくでしょう。業務全体を把握して、全員が負担を感じることなく仕事ができればストレスは確実に軽減できます。

3.コミュニケーションを活発化させる

業務を一緒に遂行する部下たちと密にコミュニケーションを取り合うことで、チームワークと信頼関係を築けて、ミスやトラブルを回避できます。信頼関係が成り立っていれば、部下から不満も出にくくなるでしょう。

コミュニケーションが取れている状態なら、業務がスムーズに進行し、長時間労働になるリスクも減らせます。部下から思わぬアイデアが飛び出してきて、業務のプラスになることもあるかもしれません。

4.カウンセリングを受ける

会社で抱えているストレスを、上司や同僚に相談することもあるでしょう。同じ会社なら悩んでいる情景が浮かびやすく、共感してくれることも多いかもしれません。

しかし会社での悩みは、上司や同僚よりも利害関係のない第三者に話す方が良いとされています。上司や同僚には気を遣って相談できない内容も、気にせず打ち明けられるでしょう。

自身が抱える悩みをありのままに相談することによって、ストレスが緩和されるかもしれません。また、話を聞いてもらうだけでなく第三者からの客観的なアドバイスも受けられます。

会社の悩みについてカウンセリングを受ける場合は、企業内の産業医への相談以外にも、プロのカウンセラーやコーチに相談する方法があります。相談するカウンセラーやコーチは、臨床心理士や社会福祉士などの国家資格をもつ人が適役でしょう。

しかし、日々の業務に追われ、相談の時間を確保できない人もいるかと思います。時間的に対面での相談が難しい場合は、電話やメール、自宅からのビデオカウンセリングといった手法が可能なところもあるため、検討してみてはいかがでしょうか。

5.自己啓発本を読む

中間管理職のストレスを軽減するには、自己啓発本のチェックがおすすめです。自己啓発本とは、自身の能力向上や目的を達成するための手段が説かれている、自己啓発のための書籍です。

自己啓発本のなかには、中間管理職向けのマネジメントやコーチング本が多く出版されているため、参考までに読んでみてはいかがでしょうか。内容によっては、今悩んでいることへの解決方法や、ストレスを感じやすい自分の考え方を変えるためのポイントが得られるかもしれません。

しかし、自己啓発本では著者それぞれが「自分が試して良かった考え方」が紹介されています。そのため、数多く読めば良いというわけではありません。自分を奮い立たせるような、学ぶべきものが多い書籍を手に取ることが大切です。

中間管理職向けの自己啓発本のなかでおすすめの著書は以下のとおりです。

・新版 はじめての課長の教科書/酒井 穫
・できる課長は「これ」をやらない/安藤 広大
・できる上司は会話が9割/林 健太郎

上記の本は、部下へのコーチングテクニックが紹介されており、中間管理職としての業務バイブルにピッタリといえるでしょう。「チームをまとめたいのにうまくいかない」「部下のモチベーションが上がらず困っている」など、中間管理職ならではの悩みやストレスを抱えている人は、チェックしてみてください。

6.マネジメントに役立つツールを導入する

ITツールを導入して、仕事を効率化するのもひとつの手です。例えば、チャットツールやタスク管理ツールの導入などが挙げられます。

チャットツールを導入すればメールより気軽に連絡を取り合うことができ、効率的に業務が進みます。タスク管理ツールを導入すれば、テレワークで直接顔を合わせない部下の業務把握も可能です。

部下のマネジメントに集中するために、ほかの業務の負担は減らしたいでしょう。マネジメントに役立つツールを導入すれば業務が効率化され、ストレスの軽減が期待できます。

目次へ

ストレスで中間管理職を「辞めたい」と感じる前に試すべきこと

ストレスが溜まり、中間管理職という立場がつらい瞬間もあります。そんなときは、「辞めたい」と感じる前に下記の方法を試してみましょう。

・上司・同僚・部下に助けを求める
・メンバーの採用と育成に注力する
・自分のビジョンを再確認する
・コーチングを受ける

それぞれの方法について、詳しく解説します。

上司・同僚・部下に助けを求める

ストレスが溜まったら、上司・同僚・部下に助けを求めましょう。ストレスを感じていると、周りが敵に見えてしまうこともあるかもしれません。相談することで仕事を巻き取ってもらったり、業務量を減らすように動いてくれたりすることもあります。

誰に相談すれば良いか分からない場合は、まず上司に現状を伝えてみましょう。話を聞き、解決策を講じてくれる可能性があります。

メンバーの採用と育成に注力する

どうしても仕事が回らないときは、メンバーの採用と育成に注力しましょう。メンバーが増えたり成長したりすると、自分の仕事を巻き取ってもらえます。

採用をしたい場合は、上司に伝えておきましょう。現状を伝えれば、採用に動いてくれる可能性があります。育成する場合は、後任を決めて育成しましょう。自分の持っているノウハウや経験を活かして育成できれば、あなたの負担が減らせます。

自分のビジョンを再確認する

中間管理職というポジションに疑問を感じるようであれば、自分のビジョンを再確認するのも有効です。実現したい未来や将来なりたい状態を考え、自分に管理職というポジションが本当に合っているのかを振り返ってみましょう。

合っていれば中間管理職としてできることを考え、今のポジションで叶わないのであれば転職も検討してみましょう。

コーチングを受ける

現状をつらいと感じているときは、視野が狭くなりがちです。そんなときは、コーチングを受けてみましょう。

コーチングとは自発的行動を促進するコミュニケーションのことで、自分の中にある気づきを発見できます。社外の管理職経験が豊富な人物に話を聞いてもらい、メンターとして客観的にアドバイスをもらうのがおすすめです。

誰かに話すだけでもストレスが減る場合もあるため、まずは話を聞いてもらいましょう。

目次へ

企業が取り組むべき中間管理職のストレスケア

日々の業務に追われながら、中間管理職として部下のメンタルをマネジメントする必要があるため、ストレスを抱えやすい傾向があります。しかし、周りへのフォローを求められる中間管理職は、簡単に自分自身のストレス対策のために時間を割くことはできないのです。

部下のストレスケアを中間管理職が対応するならば、企業が中間管理職のストレスケアに取り組む必要があります。ケアしきれていない立場の社員がいないよう、以下のストレスケア体制を整えましょう。

ストレスチェック制度

2015年から従業員が50人以上の事業所では、ストレスチェック制度が義務化されています。定期的なストレスチェックに加え、ストレスが深刻だと判断された人はカウンセリングを受ける体制が必要です。

従業員50人未満の事業所はストレスチェックが義務づけられていませんが、導入する企業は助成金を利用できます。

従業員の人数に関係なく、ストレスを感じて心身の健康に影響を及ぼす人は後を絶ちません。ストレス状況が悪化し、うつ病などに発展すれば企業としても大きな問題となるでしょう。早期対応がうつ病の予防にもなりますので、ストレスチェックの導入が推奨されています。

上長によるケア

上司と部下の板挟みになる中間管理職には、上の役職からのアドバイスが必要不可欠です。上長から信頼の言葉をかけられたり、悩みがないか心配されたりする機会があれば、少なからずストレスが軽減されるはずです。

しかし、かける言葉によっては中間管理職をさらに追い詰める結果にもなりかねません。
アドバイスする立場の人にも、研修が必要といえるでしょう。

産業医の設置

従業員50人以上の事業所では、産業医の設置が義務付けられています。産業医とは、従業員全員が健康で快適な作業環境のもとで業務を行えるよう、専門的な立場として指導・助言を行う医師のことです。

ストレスを抱える従業員の悩み相談だけでなく、休職時や復職時の面談なども担当してくれます。

従業員50人未満の事業所では、産業医の配置は義務付けられていません。しかし、ストレスチェック制度と同じく助成金が利用できるため、配置を検討してみてはいかがでしょうか。

中間管理職向け研修

中間管理職といっても、なかには選任されたばかりという人も少なくないでしょう。中間管理職に必要なスキルが十分備わっていないまま仕事をしている場合は、手探り状態のためストレスを強く感じるはずです。

そのような人材に自主的に勉強を促すだけでは、有能な中間管理職の育成は困難です。企業として中間管理職向けの研修時間を設け、以下のようなスキルを身に付ける必要があります。

育成能力

中間管理職が抱える部下のなかには、入社したての社員も存在します。そのため、部下を育成する力も中間管理職の重要な仕事といえるでしょう。

一言で育成といっても、同じ育成方法が部下全員に適応するわけではありません。チーム内にはさまざまな性格・経歴の人材が集まっているため、部下一人ひとりに合わせたコーチングが求められます。

コミュニケーション能力

中間管理職は、求められる成果を出すため業務を円滑に進める必要があります。業務の遂行には、コミュニケーション能力が必要不可欠といえるでしょう。

さまざまな個性をもつ部下達とチームワークを築くためには、円滑なコミュニケーションが欠かせません。仕事をお願いするときの態度や、不備を注意するときの言い方など、中間管理職のコミュニケーションの取り方ひとつでチームの空気感は一変します。

部下それぞれの能力を最大限に引き出すためのチームビルディングや、部下に的確な指示を与えるためのロジカルシンキングなどの研修が有効です。

マネジメント能力

部下への指導や目標の管理に必要なのがマネジメント能力です。仕事ができる中間管理職ならば「自分が担当した方が早い」と感じる人も多いでしょう。しかし、自身がプレイヤーとして活躍するばかりではなく、部下の能力に見合った仕事を与えるスキルが必要なのです。

チームに与えられた目標を達成するためには、中間管理職がリーダーシップをもって仕事の配分を行わなければなりません。部下を信じて仕事を分配できるよう、マネジメントスキルの研修が大切です。

セルフマネジメント

中間管理職は、業務の進行状況の管理だけでなく、コンプライアンス違反のリスクや法令についても学ぶ必要があります

「自身のチームで企業規則を守っていない部下はいないか」「コンプライアンスに違反していないか」といったポイントは、中間管理職がチェックしなければならない項目です。

しかし、研修もなしにコンプライアンスを遵守と指示されても具体的にどのような点に注意すべきか分からないでしょう。部下それぞれがセルフマネジメントできるような環境を整える必要があります。

外部の専門家を活用する

通常業務の負担が大きく、個々のストレス管理にまで手が回らない企業も少なくないでしょう。しかし、ストレスマネジメントは企業にとって必要不可欠です。

社内で対応できないものは、外部の研修を利用したり専門機関に相談したりするのがおすすめです。外部委託により、中間管理職の負担を減らせます。

目次へ

まとめ

企業にとって重要ポストにある中間管理職のメンタルをケアすることは、全体的な業務の質の向上につながります。

また、研修を上手く取り入れれば、個別に対応しなくても一度に多くの中間管理職にリーチすることが可能です。ここで紹介したストレス解消法も試しつつ、上手くストレスと折り合いをつけましょう。