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パワハラの定義とは
パワハラは、被害者個人だけでなく、企業にとってもリスクがあります。企業内で発生させないようにするためには、どういった行為がパワハラにあたるのか、まずは明確な定義を知ることが必要です。
パワハラとは、職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて心身の苦痛を与える行為を指します。行為者(加害者)は、上司や先輩といった職務上の上下関係を問わず、業務の範囲を超えて優位性を利用する者すべてです。
そのため、同僚間や部下から上司へのパワハラ、あるいは正社員のみならず契約社員やパートタイム労働者へのパワハラも存在します。
また、行為者がどう思っているかに関わらず、相手(被害者)が不快に感じたらパワハラに該当します。
行為者のなかには、自分の行為がパワハラだと自覚していない人も少なくありません。パワハラが常態化することにより、社内の人間もそれが業務指導として当たり前と思い込んでしまうおそれがあります。
パワハラが起こる要因はさまざまですが、大きくわけるとふたつの原因が考えられます。
ひとつは「ストレス」です。仕事や私生活における精神的負担が大きくなると、部下や後輩といった、自分より立場の弱いと思っている相手に乱暴な態度や無茶な要求で発散しようとします。
もうひとつは「組織の体質」です。体育会系のようなトップダウン型の組織においては上司や先輩の命令は絶対といった雰囲気があります。
そのため、業務範囲を逸脱するような無理な仕事にも応じなければならず、パワハラが黙認されるような環境を生み出しやすいでしょう。
パワハラが会社に及ぼすリスク
前述したように、中小企業においても2022年4月1日から「パワハラ防止法」が施行となり、相談窓口の設置や再発防止対策が求められるほか、行政の勧告に従わなかった場合には企業名が公表されます。
また、パワハラは行為者と相手といった当人同士の問題ではなく、企業にもさまざまなリスクをもたらすため、パワハラが起こらないような環境づくりが必要になります。
もしも、パワハラが起きてしまった場合、企業には以下のようなリスクがあります。
職場環境の悪化
目標達成ができなかった社員に対し、長時間にわたって叱責し続ける、叱責中に机を叩くといった威圧行為は、職場にいる従業員を萎縮させ、労働に対するモチベーションを下げることにもなりかねません。
次は自分じゃないかという不安を引き起こし、離職率や休職率の増加につながるおそれもあります。
メンタルヘルス障害による労災の申請
従業員がパワハラを受けたことにより、心の健康を損ねてしまうケースも考えられます。
その場合、パワハラによってメンタルヘルスに障害が発症したとして、会社としても労災申請に協力することが必要です。もし、協力しない場合には労災認定を求めて裁判に発展する場合もあるでしょう。
企業イメージの低下
企業がパワハラ行為を起こさせないための対策を怠り、起こっていることを知りながら放置した場合、企業イメージは一気に低下するでしょう。取り返しのつかないダメージを負うこともあり得ます。
企業として適切な対応をとらなければ、被害者が損害賠償責任を求めて裁判を起こしたり、インターネットへの書き込みによって情報が拡散したりするおそれがあります。
その結果、顧客が離れてしまったり、優秀な人材を採用することが難しくなったりすることもあるでしょう。
注意したいパワハラの種類
厚生労働省は「職場のパワーハラスメント」を6つに分類し、パワハラになりうる行為の典型例を定めています。ここでは注意したいパワハラの種類を見ていきましょう。
1.身体への攻撃
たとえば、殴打や足蹴りを行ったり、相手に物を投げつけたりなどの行為です。あるいは狭い個室に閉じ込めたうえに反省文を書かせるような身体的な制限も、身体への攻撃にあたります。
2.メンタルへの攻撃
人格を否定するような言動、必要以上の長時間にわたる厳しい叱責、ほかの従業員の前で威圧するような大声での叱責といった行為が該当します。
3.⼈間関係に対する妨害
職場でひとりだけ離れた場所に席を設置したり、同僚が集団で無視をしたりする行為が該当します。仲間外れや無視といった行為はパワハラを肯定することになるのです。
4.過⼤な要求や妨害
達成が極めて困難なノルマを強制したり、業務とは関係のない私的な雑用を強制的に行わせて仕事を妨害したりするなどの行為が該当します。
5.能力に見合わない過⼩な要求
従業員を退職させるために、誰でも遂行可能な業務を行わせたり、仕事を与えなかったりといった嫌がらせ行為が該当します。
6.私生活への干渉や侵害
職場外でも従業員を継続的に監視したり、私物の写真撮影を行ったりする行為などが該当します。また、休日出勤や時間外労働を頻繁に強制するような行為もパワハラにあたります。
参照:厚生労働省
「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
企業のパワハラ対応の流れとポイント
パワハラが起こらない職場づくりのためには、しっかりとした対処方法を用意する必要があります。ここでは、パワハラのリスクを抑えるための具体的な対応の流れとポイントについて見ていきます。
1.ハラスメント相談窓口の設置と受理
パワハラ対応の多くは、相談するための窓口を設けることからはじまります。被害を広げないためにもハラスメント窓口を職場に設置し、従業員全員に周知を図ることが大切です。
相談内容は、ハラスメント窓口内にのみ情報が共有され、プライバシーは徹底して確保される旨を伝えます。そのうえで、面談、メール、電話、手紙といった、従業員がもっとも相談しやすい方法で対応を行います。
相談してきた従業員のフォローに努め、ゆっくりと丁寧に聞き取りを行いましょう。
また、相談内容はプライバシー保護に留意し、訴訟に発展した場合を想定して記録を資料化します。
2.行為者や第三者への事実確認
従業員から申告を受けた場合、最初に行為者に対し事実確認を行います。
ただし、相談してきた従業員の意向も考慮しなければなりません。どの範囲まで調査を進めるべきかあらかじめ相談者に確認を行う必要があります。
行為者の監督者(上司など)への観察や指導の依頼にとどめたり、ほかの目撃者の有無の確認をしたりなど調査範囲はさまざまです。
行為者への事実確認を行う際には、行為者に対して苦情や相談が入っていることを説明し、企業として事実確認を行う必要がある旨を伝えます。
ここで注意したいのが、はじめから行為者を加害者と決めつけることなく、中立な立場で聞き取りを行い、客観的に事実を把握するよう努めなければなりません。
また、相談者と行為者の意見の食い違いをなくすためにも、目撃者や同様の被害を受けた従業員がいないか調査を行い、パワハラの有無を確認していくと良いでしょう。
3.状況の分析と当事者への措置を検討
当事者(相談者、行為者)の証言内容や事実確認を分析し、当事者の心理状況に配慮しながら公平かつ迅速な判断を行います。場合によっては、弁護士や産業医といった第三者に意見を求めるのも有効です。
結果は当事者に伝え、事実確認の有無に関係なく、判断に至った経緯や根拠となる理由を丁寧に説明しましょう。当事者から判断に関して不服申し立てがあった場合には再度調査を行います。
パワハラの事実が確認できた場合、行為者に加害行為をやめるよう伝えるとともに、被害者の不利益を回復させるために、当事者同士の関係改善や職場環境の改善を図ります。
また、パワハラの事実が確認できず、相談内容が虚偽であると判断した場合には、懲戒の対象となるおそれがある旨を相談者に伝えましょう。
ただし、虚偽の申し立てを行った背景には何らかの原因が潜んでいると考えられるため、その原因の分析を行い、職場環境の改善につなげていくことが重要です。
4.当事者へのフォロー
再び同じような問題が起こらないようにするためには、相談者だけでなく行為者にもカウンセリングを実施することが大切です。
行為者に対しては、自身の行為が相手にどのような影響を与えていたのかを、行為者に理解してもらう必要があります。相談者に対しては、心理的ダメージが大きい場合にメンタルケアとして医療機関を紹介したり、配置転換を勧めたりする必要があるでしょう。
5.再発防止策の取り組み
パワハラの問題は解決して終わりというものではありません。ハラスメントが起きにくい職場環境を整えるためには、解決後も当事者双方への定期的なフォローを行い、職場全体で意識啓発や再発防止対策に取り組むことが重要です。
あるいは、専門家による研修や客観的な視点からの意見がもらえる外部機関を活用するのも有効でしょう。
パワハラ対応のお悩みはTBLにご相談ください!
パワハラ対策であれば、東京・ビジネス・ラボラトリーが提供する企業サポートをご検討ください。
心理学メソッドを使ったメンタルサポートは、経営者や社員の心の成長を促し、社内のハラスメント防止に役立ちます。
パワハラ対策でお悩みの企業は、東京・ビジネス・ラボラトリーへぜひご相談ください。
まとめ
パワハラ問題は、会社として適切な対応を行うことが大切です。判断を誤ったり、対応を怠ったりした場合には、職場全体の雰囲気が悪くなるばかりか、企業イメージの低下や裁判などといった大きなリスクをもたらすおそれもあります。
パワハラへの対策を本格的に検討するなら、外部機関への依頼も視野に入れると良いでしょう。