在宅勤務はメンタルへどう影響するのか|テレワークが普及する背景とケア方法

時代の変化で在宅勤務が増えているものの、メンタル面のケアがしにくいのは困りものです。今回は、在宅勤務中にメンタル面の不調が起きやすい原因と対処法を紹介していきます。


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在宅勤務が普及してきている背景

これまで、働く場所といえばオフィスなどに通勤することが一般的でした。しかし、近年は在宅勤務を導入する企業が増えています。

在宅勤務が普及してきている背景には、「新型コロナウイルスの影響」と「働き方改革の影響」のふたつがあります。

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの影響で人との接触を減らすために、在宅勤務の導入をはじめる企業が増えました。

厚生労働省も、感染対策のためにテレワーク導入を推奨している状況です。

総務省のデータによると、1回目の緊急事態宣言時(2020年4月)のテレワーク導入の増加率は17.6%から56.4%へ上昇し、一度は低下したものの2021年3月には38.4%まで上昇しています。

感染拡大前に比べると、テレワークの定着率は上昇してきていることが伺えます。

「令和3年版 情報通信白書|テレワークの実施状況」(総務省)

とはいえ、業種によってはテレワークが難しいケースもあります。たとえば、病院や施設などに従事する医療関係者や介護福祉関係者などです。これらの職種は、看護や介護が必要な人の直接的なケアが必要となるため、在宅勤務ではまかないきれません。

一方、普段からインターネットを駆使して仕事をしている情報通信業では、比較的テレワークへのハードルは低く、実施する企業は増えました。

新型コロナウイルスの影響は、テレワークへの切り替えに踏み切れなかった企業にとって、大きな転機となったのではないでしょうか。

働き方改革の影響

新型コロナウイルス以前から、働き方改革の取り組みのひとつとして、政府はテレワークや在宅勤務の導入を推奨しています。

在宅勤務を上手に活用することで、従業員のワークライフバランスの向上や、育児や介護との両立、多様な働き方の確保などが得られます。

さらに、通勤時間の削減により、時間を有効に使えるなどのメリットもあるでしょう。柔軟な働き方が選択できるのもテレワークや在宅勤務の強みです。

在宅勤務の導入は、人々の働きやすさを確保するためにも進められています。

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在宅勤務者はどう感じているのか

在宅勤務をしている人は在宅勤務を良いと感じている点もある一方、在宅勤務で困っていることもあります。実際、在宅勤務者はどのように感じているのか、良い点と困っている点にわけて解説します。

在宅勤務の良い点

在宅勤務が良いと感じられる点は、時間を有効活用できることです。

【在宅勤務の良い点】
・通勤のストレスからの解放
・自由な時間の増加
・休憩時間に好きなことができる
・家事と両立しやすい

勤務場所が近ければ問題ありませんが、通勤に1時間以上かかる場合ストレスがかかっていることもあります。

車通勤の人は、渋滞や交通トラブルによる遅延の心配もあるでしょう。電車通勤の人は、満員電車に乗らざるを得ない状況もあります。

在宅勤務に移行することで、人込みを回避できたり、通勤や移動にかかっていた時間を有効活用できたりと良い点があります。自由な時間が増えると家事との両立もしやすくなり、休憩時間に家族とのコミュニケーションを図ることも可能です。休憩時間も人の目を気にしなくて済むため、好きな音楽を聴きながらリラックスすることもできるでしょう。

在宅勤務によって困っている点

在宅勤務によって困っている点は、生活習慣の乱れや労働環境への懸念です。

【困っている点】
・生活のリズムが崩れる
・運動不足や間食を食べすぎてしまう
・業務用デスクやチェアなどがなく、仕事に向かない環境
・業務上でわからないことを気軽に聞いたり確認したりしにくい
・紙の書類のやり取りに時間がかかる

在宅勤務は自由な働き方ができる一方、生活習慣を意識しないと健康への悪影響につながります。

これまで準備や通勤にかけていた時間を睡眠などに充てられることは在宅勤務の利点ですが、規則正しい生活を意識しないと生活リズムが崩れやすくなってしまいます。

また、通勤時は階段の昇り降りや歩くことで、自然と体を動かす機会は多いものです。在宅勤務では出勤の必要がなく、運動不足になりやすいといえるでしょう。

さらに、職場では仕事を効率良く進めるためにデスクやチェアなど使いやすいものが備わっていますが、自宅での労働環境は職場と比べると不十分かもしれません。

仕事中に不明な点が出てきてもすぐそばに聞ける相手はおらず、自分で解決しなければならない状況もあるでしょう。在宅勤務では、職場での空気感を把握することが難しく、上司の意図していることが読み取れず不安になることもあるかもしれません。

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在宅勤務はメンタルヘルスに不調をきたしてしまう可能性がある

上述したように、在宅勤務では身体面だけでなく、メンタルヘルスにも影響を及ぼす可能性があります。在宅勤務は通勤の手間がかからず、慣れた場所でリラックスしながら仕事ができるのが魅力ですが、テレワークならではの問題点があることも否定できません。

在宅勤務をきっかけに気持ちが不安定になる、体の不調を引き起こして仕事ができなくなるなど、いわゆる「テレワークうつ」と呼ばれるメンタル面の不調を訴える人が増えています。

在宅勤務は今後もますます普及していくことが予想されています。在宅勤務が従業員のメンタル面に与える影響や問題点を、ここでしっかり理解しておきましょう。

仕事とプライベートのメリハリが無くなるため

在宅勤務でメンタル面の不調が起きやすい原因のひとつは、仕事とプライベートのメリハリが無くなるからです。

在宅勤務はスーツに着替える必要がありません。通勤の手間もかからず自由な働き方ができる一方で、オフィスのような人目が無いぶん時間管理が難しいのは困りものです。

そうなるとだらだらと仕事を続けてしまうのは良くあることで、業務効率が悪くなり、残業時間が無駄に増えてしまいます。なかには就業時間がずれ込んで、昼夜が逆転してしまうケースも散見されます。

こういった生活の乱れは自律神経に負担をかけ、メンタルヘルスの不調を招く精神的な疲労を蓄積させる要因です。

慣れない環境に対応できないため

在宅勤務という慣れない環境に適応できないことも、メンタル面の不調を引き起こす一因でしょう。

自宅は慣れた場所でも、基本的に仕事をするために作られた空間ではありません。業務に必要な機材や事務機器が無いぶん、思うように仕事がはかどらないと焦ってしまいます。

リモートワークに欠かせない社内チャットツールなど、ネット機材が思うように使いこなせないと悩む人も多いでしょう。ツールに慣れていても自宅ではネット環境が悪く、業務量に対応できないとノルマがこなせません。

環境が変わったことで今までスムーズにいっていた仕事が進まないのは、かなりのストレスです。手間取ることに落ち込んだり、時間がかかることにイライラしたりと、気分が不安定になりがちなので注意が必要です。

孤独に感じてしまうため

在宅で仕事をすることで孤独感にとらわれてしまうことも、在宅勤務中にメンタルヘルスの不調を訴える原因のひとつです。

在宅勤務では家にこもりきりになり、人に会う機会が極端に減ります。特に一人暮らしの人の場合は誰とも会わない、話さない孤独な日々が長く続き、寂しさから気分が落ち込んでしまうのも仕方がありません。

おしゃべりは気分転換やストレス発散の手段でもあります。同僚や上司との交流が無くなってしまったことで自分の仕事や将来性を不安に感じて落ち込み、体調を崩してしまう人も増えています。

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在宅勤務者のメンタルヘルスケアをおろそかにするとどうなるのか

在宅勤務は場所や時間にとらわれない働き方ができることから、「ストレスがたまりにくい」とメンタルヘルスケアが軽視されがちです。

しかし、在宅勤務者のメンタルヘルスをおろそかにすると、あらゆる悪影響につながるおそれがあります。

うつ病などの精神疾患を発症してしまうリスク

メンタルヘルスに良くない状態が長く続くと、うつ病などの精神疾患を発症するリスクが高まります。

在宅勤務では、オンとオフの切り替えがうまくできないと、労働時間が長引いて1日中仕事を抱える状況になるおそれがあります。職場への往復がオンとオフの切り替えになっていた人にとっては、在宅勤務における仕事とプライベートの切り分けが難しい場合もあるかもしれません。

家族の行動が気になり、仕事に集中できない状況もストレスにつながってしまうこともあるでしょう。コミュニケーションの変化により、ひとりで業務を遂行しなければならない不安感や孤独感を抱く人もいるかもしれません。

「在宅勤務だからこそ成果を出さなければならない」とプレッシャーが重くのしかかってくることも、ストレスを溜める原因となります。

業務効率が悪化するリスク

適度なストレスは業務効率を上げ、心も身体も調子が良いときには仕事がスムーズにできるものです。しかし、重いストレスを抱えているときは、業務効率が悪くなってしまいます。

ストレスによりミスが増えて、それが原因でまたストレスが溜まるという悪循環に陥るケースもあるでしょう。些細なミスでも、脳はストレスとして受け止めてしまいます。

完璧主義だとミスする自分が許せないこともあるのかもしれません。自分自身を追い詰め、心理面や身体面での不調をきたしてしまうと、モチベーションが低下して良い仕事ができなくなるおそれもあります。

離職率が高まるリスク

場所や時間にとらわれず柔軟に働ける在宅勤務でも、メンタルヘルスケアを軽視すると離職率が高まってしまうかもしれません。

在宅勤務は自由な反面、ストレスがかかりやすい勤務形態です。メンタルヘルスケアをおろそかにすることで、転職を検討する人も出てくるでしょう。これは、優秀な人材の流出にもつながりかねません。ワークライフバランスが保てなくなり、心身面に支障が出てきたら転職を検討するのはごく自然なことです。

離職を防ぐには、早期に従業員の異変に気付き、適切なメンタルヘルスケアを実施することが大切です。

自由な時間を有効的に活用し、ワークライフバランスを叶えられるのは在宅勤務だからこそです。従業員の働きやすい環境を実現できれば、優秀な人材の定着や仕事への熱意、作業効率の向上も見込めるでしょう。

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在宅勤務時にできるメンタルヘルスケア

上司としてできる、在宅勤務中の部下に対するメンタルヘルスケアの方法を紹介していきます。

在宅勤務に起因するメンタルヘルスの不調は、企業の業績に悪影響を与える深刻な問題です。在宅勤務ならではの問題点を改善するきめ細やかなケアで、部下の心の健康をサポートしましょう。

就業時間の管理をする

在宅勤務中の負担を減らすためにも、上司が部下に代わって就業時間の管理をすることをおすすめします。

残業を大量にしている社員がいないか、勤怠管理ツールなどを活用してチェックすると良いでしょう。自由な働き方ができる在宅勤務のメリットとは矛盾するものの、企業の最低限の業務管理は必要不可欠です。

仕事の指示を出す際に、あらかじめスケジュールを組んでおくと安心です。決まったスケジュールに沿って仕事を進めれば良いと分かれば、部下の感じるプレッシャーもやわらぎます。

在宅勤務時のルールを作る

在宅勤務時のルールを作って部下と共有しておくことも、メンタルヘルスの不調を防ぐのに効果的でしょう。

特に報・連・相のルール作りは重要です。在宅中の連絡が頻繁だと業務が差支え、間隔が空きすぎると従業員が不安になりがちではないでしょうか。

こういった混乱を避けるためにも、簡単な確認や相談はチャットでする、急ぎの用事は電話でするなどのルールを決めておくと良いでしょう。ルールを決めることで仕事がスムーズに進み、部下が感じるストレスを減らせます。

また、上司に質問をしたいときに、いつ質問をしたら良いのかわからないと悩む人もいるでしょう。在宅勤務で顔が見えないと特にタイミングがはかりにくいですよね。

勇気を出して質問をしても「いまは忙しいので後にしてほしい」などと言われてしまうと、次はいつ話しかけたら良いのか悩んでしまい、結局なかなか質問できないということもあるでしょう。

そのようなときにも、ルールが決まっていると余計な気を遣うことなく、質問を投げかけることができます。

コミュニケーションを取る機会を増やす

孤独に陥りやすい在宅勤務だからこそ、コミュニケーションを取る機会を増やすことも大事です。

社内チャットなどを通じて朝礼や終礼をするなど、職場内の一体感を高める工夫をしましょう。希望者を募って、オンラインランチ会なども開催するのもおすすめです。

定期的にオンラインで個別面談をするのも効果的です。部下の悩みや現状をしっかり聞くことで異変の早期発見につながり、対応しやすくなります。

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メンタルヘルスケアを成功させるためのポイント

在宅勤務中のメンタルヘルス対策を成功させるポイントを紹介していきます。

健康管理は企業が押し付けるだけでは、良い結果が得られません。本人に健康管理に取り組ませることも大事です。

大切な部下が在宅勤務でも健康で実力を発揮できるよう、上司としてのスキルアップも目指しましょう。

セルフメンタルヘルスケアを促す

在宅勤務中は部下に対して、自主的なセルフメンタルヘルスケアを促す必要があります。

在宅勤務中は上司や周りの目がどうしても行き届かないため、上司側から呼びかける対策を取るだけでは不十分です。健康を守るためには本人の自発的な行動が必要不可欠です。

テレワーク中でも時間を決めて休息をしっかり取る、ストレッチや散歩など、在宅勤務のストレスを軽減できる具体的な方法を指示して健康管理を呼びかけると良いでしょう。

業務効率の悪化が気になるときは、余裕をもち俯瞰してみることで、必要以上に落ち込む回数が少なくなるかもしれません。業務効率の悪化を防ぐために、心のゆとりを意識しましょう。

また、心理カウンセリングは、自律性を高めることにもつながります。
自律性を高めることによって、自分自身をコントロールしやすくなるでしょう。

これはテレワークで仕事をする上でも大切で、自律性を高めることにより指示待ちではなく自走して仕事ができるようになります。
セルフメンタルヘルスケアを促すことによって、このような思わぬ副産物も得ることができるのです。

メンタルヘルスのための知識を身に付けるための研修を受ける

部下に適切なメンタルヘルス指導をするために、自分自身のスキルアップを図るのも選択肢のひとつです。専門家の行う研修を積極的に受けて、心理学に関する知識を身に付けましょう。

個別懇談などにおいても、上司がメンタルヘルスの知識を有しているほうがより良いサポートができるのはいうまでもありません。

在宅勤務で時間に余裕ができたこの機会がチャンスです。職場のプロフェッショナルとして、心理学を学ぶ時間に充ててみてはいかがでしょうか。

東京・ビジネス・ラボラトリーでは、社内向けに研修を行っています。オンラインでも対応可能なので、在宅勤務をしている企業様にもおすすめです。

また、一社一社各社のためにオリジナルの研修内容をご用意しているため、要望に応じて対応することができます。

在宅勤務中の部下のモチベーション維持に悩んでいる方、在宅勤務を機に心理学を学ぶことを検討しているなら、どうぞお気軽に東京ビジネスカウンセラー学院にご相談ください。

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まとめ

在宅勤務で部下にメンタル面の不調が起きることは、職場にとって大きな損失です。最悪の場合は人員が減り、業績悪化にもつながりかねません。

在宅勤務中だからこそ、適切で迅速なメンタルヘルス対策を心掛けることをおすすめします。